相続は人の死亡により発生します。
悲しみの中にあっても相続となると争い事になることも多いようです。
相続にあたって、最大のトラブルは、遺産の分割です。そのために遺産分割協議書が成立しないケースが結構あります。
遺産分割協議書をスムーズに成立させるためには、相続人相互の「譲り合いの精神」が不可欠です。
また、相続税には、基礎控除として「3000万円+法定相続人×600万円(1人当たり)」があります。
相続税がかかる場合、相続の開始(通常は被相続人の死亡日)から10か月以内に税務申告しなければなりません。しかし、遺産分割協議書が成立せずに、10か月経過してしまうと、税制上、様々な特別な控除などの特例が得られないばかりか、無申告のため、重加算税や延滞税などの税金がかかってきます。
遺産分割協議書は相続人でよく調整し、「譲り合いの精神」の気持ちを持って、早めに成立させることです。
また、相続の手続きをするに当たり、必ず必要になるものが、「被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍」と「相続人の出生から現在までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍」です。また、相続人の印鑑登録証明書も必要です。
※配偶者は常に相続人になります。
相続人が配偶者と子の場合 | 配偶者が1/2、子が1/2 |
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相続人が配偶者と被相続人の父母の場合 | 配偶者が2/3、父母が1/3 |
相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合 | 配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4 |
被相続人が多大な債務(借金など)を負っている場合、相続の放棄ができます。
相続の放棄には期限があります。相続開始(被相続人の死を知ったとき)から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。この期限を過ぎると自動的に債務も引き継ぐ義務を負うことになります。また、生前に相続放棄することは無効です。
なお、相続放棄をした者の子は相続することはできません。
家庭裁判所に相続放棄の申し立てをすると、しばらくして家庭裁判所から、「この相続放棄の申立書は、あなたの意思であなたが自分で書いたものですか」と電話で確認が入ります。
また、相続放棄をした場合、放棄した人は最初から相続人とはならないので、次順位の人(例えば、子が全員相続放棄した場合、父母)が相続人になります。
相続には、単純承認と限定承認があります。
単純承認は、被相続人の財産と債務を無条件・無制限に引き継ぐものです。
限定承認は、相続財産の範囲内で債務を引き継ぐものです。ただし、限定承認は、相続人の全員の同意が必要です。すなわち、相続人全員が限定承認の相続をすることになります。限定承認をするには、相続の開始を知ったときから3か月以内に「限定承認の申述審判申立書」を家庭裁判所に提出する必要があります。
被相続人は、原則として、自分の財産を遺言によって自由に処分することができます。(例えば、愛人に全財産を与える遺言など)
しかし、それでは遺族が生活に困る、といったケースもでてきます。
こうした事態を避けるため、民法には「遺留分」の制度があります。これは一定の遺族のために、最低限相続できる財産を保証する制度です。
法定相続人が、配偶者だけの場合 | 相続財産の1/2 |
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法定相続人が、子供だけの場合 | 相続財産の1/2 |
法定相続人が、配偶者と子供の場合 | 配偶者は相続財産の1/4、子供は1/4 |
法定相続人が、父母だけの場合 | 相続財産の1/3 |
法定相続人が、配偶者と父母の場合 | 配偶者は相続財産の1/3、父母は1/6 |
遺留分は自動的に認められるわけではありません。遺言が遺留分を侵害していると分かったら、遺留分を持つ遺族は、他の受遺者(例えば、愛人など)に対して「遺留分の侵害額請求」を行わなければなりません。これは、自分の遺留分に相当する財産を相手方の受遺分から減らすよう請求することです。
遺留分の侵害額請求は相続開始前にはできず、また相続開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内に行わないと、権利が消滅します。
侵害額の請求は、請求の意思表示をするだけで有効ですが、相手が応じない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
遺留分侵害額請求により生ずる権利を金銭債権化することになりました。そうすることにより、遺留分権利者と遺贈等を受ける者との間で生ずる複雑な共有関係を回避できるようにしました。(2019.7.1から施行です。)